絵描きがみた世界

パレットに絵の具を乗せる。少年は白と黒が好きだった。
曖昧な景色が嫌いで、なんでも物事を白か黒のモノトーンで表したがった。


月日が経ち、筆を洗うバケツの水は濁り、白のパレットには黒が混じり黒のパレットには白が混ざった。
白を乗せた黒や黒っぽい白、次第に少年は曖昧なニュアンスを好むようになる。
グレーでしか表せない景色があることを知ったのだ。


余りのショックの大きさに世界を描く色に純粋な白色や黒色は有り得ないと思い込んだ少年。
それからのスケッチブックは灰色一色だった。
強さしか肯定できなかった子どもの頃をあざけ笑うかのように灰色の絵ばかりを描き続けたのだ。


そんなある日。アトリエを整理していた青年は、偶然にも幼い頃に描いたほこりまみれのスケッチブックを発見する。純粋な2色で描かれた世界は、今の自分にはまぶし過ぎて、自然と涙が零れた。


強さしか肯定できなかった自分が嫌で変わろうとしたのに、結局自分のしたことは弱さに溺れ、世界から目を背けることだったと気付く。
強さしか肯定できないことと弱さしか肯定できないことは一緒だったのにと。


その日から彼の絵には鮮やかな濃淡が生まれた。
世界には曖昧にしか表せないものも沢山存在する。でも、それ以上に真っ黒や純白でしかあらわしようのないものだって数多く存在するのだ。
大切な人を想う気持ちや、零れさせてしまった涙、子どもの頃みた焼けるような夕暮れに、満天の星空。
大事なものの一つ一つに真剣に向き合い筆を取る時、どうしようもなく白でしかないものや黒でしか有り得ない世界が其処にはある。
弱さの存在を認めた上で強さと向き合うことをその男は選んだ。確かに選んだのである。


それでも彼に訊けば、きっとこう答えるだろう。素直に、あっけらかんと。
僕はただ見えてるものを描くだけなんだって。


…小沢さんの真っ黒さにしびれました^^
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