追悼 佐野実

ラーメンの鬼 佐野実先輩が亡くなった。
多臓器不全だそうだ。
当ブログが佐野先輩のことを初めて取り上げたのは6年も前のことになる。
当時、肝硬変で亡くなった日本ラーメン協会副理事長の棺にラーメンを入れようとする佐野先輩を微笑ましく紹介したっけ。
ラーメンの食べ過ぎで死んだ男の棺に更にラーメンを入れようとする佐野先輩。
業界では畏敬を込めラーメンの鬼と呼ばれる彼だが、遺族の眼にはこの鬼こそ賽の河原の鬼なんかより余程憎々しく忌々しい悪鬼に映ったに違いないはずだ。


他人事だから、というのも勿論あるが一歩引いた立場の僕からすれば、たけちゃん(副理事長)も佐野先輩も非常に気持ちのいい馬鹿だった。
誤解をして欲しくない。これは褒め言葉である。
ラーメンを愛し、ラーメンに愛され、ラーメンに命をかけた末、ラーメンと心中してゆく男たち。
死ぬと分かっていて喰った。死んでもいいと思い喰らった。
その覚悟を認めたから、先輩は死んだ親友のためラーメンを作り、棺に入れようと決意したんだ。


繰り返しになるが佐野先輩の死因は多臓器不全である。
詳しくは知らないが、恐らくラーメンの食べ過ぎが若過ぎる死の一要因であることは間違いないだろう。
ラーメンをこよなく愛したあの鬼は、今頃地獄の釜で鶏ガラを炊き、待っていた親友相手に極上の一杯を振舞っているのだろうか。
『よう、たけちゃん。待たせたな』
『待ちくたびれたよ佐野さん。さあ、早くうまいのを頼むよ。腹ぺこなんだ』
『ああ。頼まれなくても作るさ。お前に食わせるため、あれからまた散々研究したからな』
そんなことを考えると自然に目頭が熱くなる。
身体から綺麗に水分と塩分が抜けてゆくのを感じる。
あぁ畜生。なんて夜だ。
こんな夜はラーメンを食べるしか他ないじゃないか。
追悼なんてかっこいいものじゃーないけれど、僕は今彼らが愛したこの奇妙な食べ物を欲している。




って綺麗に終わらそうと思ったらこれだよ!!!!
日刊スポーツ ラーメンの鬼佐野実さん死す 多臓器不全
>病床では、究極のチャーハン専門店を開業する夢を語っていた。


やれやれ。一杯食わされた気分だ。