若旦那(湘南乃風)の日記を読み解く

『友人の友人にアルカイダがいる』
これは物議を醸したある政治家の一言である。
ていうか鳩山邦夫


『若旦那(湘南乃風)とマイミクである』
これはどこにでもいる冴えない男子大学生による一世一代のカミングアウトである。

ていうか僕だ。


大臣とテロリスト、ボッチ学生とレゲエスター。
世は意外性を感じるアンタッチャブルな組み合わせに飢えている。
もう一度言おう。
「篠塚まさるは若旦那(湘南乃風)とマイミクである」


面識はない。
なくていいと思ってる。
会ってみたいとは思うけど、我が家のクローゼットには生憎だぼだぼのTシャツもぶかぶかのズボンも入っていない。
ついでに言えば乾燥大麻も入っていない。
そんなレゲエプアーである僕と若旦那率いる湘南乃風では釣り合いが全くとれまい。

湘南乃風


お得意の全身ユニクロスタイルで彼らと対面したとしても、目が合った瞬間ジャマイカ仕込みの右ストレートでのされ、カツアゲされ、勘弁して下さいと財布を差し出すも、「このタオルを振り回しながらジャンプしてみろ」と脅され「チャリンチャリン」「おらッ!!まだ小銭残ってんじゃねぇかダボが!!」と更に殴られ、泣きながら家に帰るのが関の山である。
だから面識はない。


若旦那さん(怖くなって敬称つけた)とはあくまで、ミクシィの『芸能人とマイミクになれちゃうキャンペーン』でマイミクになった仲だ。
『マイミク』。それ以外に僕と彼の絆を説明する適当な言葉がみつからない。
不確かで頼りなく切ない関係性だ。
しかし、日記は読んでいる。
「友だちまで公開」という設定表示が自尊心をくすぐる、若旦那さん秘蔵のプライベートダイアリーである。


今日も的屋のチンピラみたいなヒゲが素敵な若旦那さん(敬称だけではボコられるのが怖くなり褒めてみた)は、日記を書いている。
手抜き料理の定番であるパスタを作っただけの女に一目惚れし、その後大貧民負けてマジギレし、カップルになるも喧嘩し、パチンコ屋逃げ込み、景品の化粧品買って謝りにいく、という生活感たっぷりの詞が自慢の曲でヒットチャートおよびドンキホーテのCDコーナーを賑わしている、あの若旦那さんが書く日記である。
タイトルは『恋愛トーク』。
胸が高鳴った。
嫁ミンミ(中田氏婚)との出会い、自身の初恋秘話、たこ焼きの素早い焼き方、小学生から効率的にこづかいを巻き上げる夜店経営テク、などなど、タイトルからは様々な内容が想像できる。
読む前から僕のテンションは最高潮に達していた。
この日記を読み、若旦那さんの哲学に共感できれば、僕の湘南乃風入りも夢じゃない。
屋台経営に、闇金地上げ屋、美人局。
(外見が)チンピラそのものである若旦那さんと仲良くなれば、あんなことやこんなこともし放題に違いない。夢が広がる。


はやる気持ちを抑え、僕はゆっくりとマウスカーソルを動かした。
以下一部抜粋。


恋愛トーク
2010年08月30日15:19
みんなのメッセージを読んでると、やっぱ恋愛で悩んでる人多いね。


でもさ、みんな悩んでんだって思うとちょっと楽になれるね。


俺、いつも自分に言い聞かせてる事があって、


幸せは自分でなるもんじゃない!


人に幸せにしてもらうものだ。


だから、人を幸せにできない奴は幸せにしてもらえない!


って言い聞かせてる。


全然意味がわからなかった。
すごい。すご過ぎる。
ここまで意味が分からないとは予想もしていなかった。
超頑張って解釈すれば、
『周囲に幸せを分かち合う人間がいなきゃ本当の意味での幸せを感じることはできない。一人でいては幸せは分かち合えないので、仲間を増やす方法の一つとして他人を幸せにする必要がある』
と意訳することもできる。
でもこれは絶対違う。
あんなに喧嘩が強そうで酒が強そうでパチンコが強そうな若旦那さん(ヤンキーが喜ぶ最大級の褒め言葉)が、こんな女みたいにメソメソした思想を持っているわけがない。
だから僕はこう理解した。

俺、いつも自分に言い聞かせてる事があって、


幸せは自分でなるもんじゃない!
他人をぶん殴って、巻き上げた金で飲む酒は美味い


人に幸せにしてもらうものだ。
俺はセックスの際、決して自分から腰を振らない。レゲエのリズムにあわせ、女が腰を振る。幸せ、つまりエクスタシーは女が俺にもたらすもの


だから、人を幸せにできない奴は幸せにしてもらえない!
失神はある意味エクスタシー、つまり幸せ。お手手の皺と皺を合わせた拳で相手が気を失うまで顔面を殴り続ける覚悟もないシャバ僧にドンぺリを飲む資格はない。ソープに行く資格もない。そもそもカツアゲできなきゃ金がない


って言い聞かせてる。


若旦那さん……舐めたことばっか言ってすみませんでした!!
何気ない日記なのに怖すぎます!!
僕やっぱ友だちにはなれそうもありません!!
カツアゲだけはっ、カツアゲだけは勘弁してください!!
あの、違っ、違うんです!これは、部活のユニフォームを買うためのお金で!
ひぃぃ!!
―――おしまい。


レゲエファンは童貞公論なんて読んでないと思うけど、もし街で僕を見かけてもタオルもってジャンプさせたりしないで下さいね。