秒速5センチメートル

「ねぇ、秒速5センチなんだって」
「え?なに」
「さくらの花の落ちるスピード。秒速5センチメートル


惜しい作品だった。
小学生のころ相思相愛だった初恋の相手を想い続け、心に虚無感を抱えたまま大人になった主人公。
こいつがね、一言でいえば、ただ感傷的なナルシス野郎なんですよ。
中一の秋に6時間半もかけて逢いに行ったのを最後に、以来はなんのアクションも起こさず。
周りにはいつも女の子がいて、その子たちは主人公のことを一生懸命愛そうとしてくれるのに主人公はずっと遠くをみてて。遠くをみてるくせに近づいてきた女の子のことはてきとうに受け入れる。
彼女たちが自分の事好きだってわかっているのに、無責任にやさしく接して、相手が一線を越えて踏み込んでこようとすると静かに拒絶する。
そしていつも僕は孤独だみたいなポーズをとる。
みていてすごく苛々するんですね。ほんと最低なんだわ。
…どうして男ってこうなんでしょうね。
本作は情けなさとかもどかしさとか、男の子の持つありのままの格好悪い部分が新海監督の描く美しい世界観に絡み合い、どうしようもなくセンチメンタリズムを刺激する作りになっています。
正直泣けました。そして泣いた後で、惜しいのは作品ではなくそこにでてくる主人公の人生で、つまりは作品に感情移入している僕自身であること気付かされてしまった。
秒速5センチメートル。いい映画。

秒速5センチメートル 通常版 [DVD]

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