オチなんかない。甘えんな

 日記です。昨日から今日にかけてあったことを綴ります。 
 「一晩中、マリア様がみてる」というオールナイトイベントを開催した。
独りきりで。要は家にある文庫「マリア様がみてる」を徹夜で全巻読破しようという趣旨のイベントだ(誰がなんと言おうとイベントだ)。
会場は僕の部屋。綺麗に並べられたお菓子、漂う紅茶の薫り。さながらここは乙女の園、薔薇の館。目を閉じて耳を澄せば、そこかしこから聞こえてくる乙女たちの…「イグゥゥゥああ゛ぁぁイグぅぅゥ!!!!!」…流しっ放しだったAVを止めた。薔薇の館にマシンバイブは似合わない。
さて読書開始だ。30分。お腹が冷えてきた。毛布に包まる。更に10分。ページに印刷された文字からことばの意味が剥離していく。字が読めなくなり模様に変わる。こうなるともうダメだ。仮眠をとろう。
11時間後。明け方の冷え込みで目が覚める。変な体勢で寝たから節々が痛い。ストレッチをしながら部屋を見回す。投げ捨てられたお菓子の包み紙、丸まったティッシュ、焼きかけのAV、フリップホール。冷えて渋くなった紅茶を啜る。うん。紛れもなく、ここは僕の部屋だ。――絶望した。きっと全部友だちがいないせいだ。そういうことにしたい。


 ちなみに今この日記は昼過ぎのミスタードーナツで書いてる。昨日の反省を活かし、今日はお外でマリみてを読んでみようと思ったからだ。 日差しが心地良い。あたたかいカフェオレは一口ごと僕を優しい気持ちにかえてゆく。穏やかな午後…のはずだった。
現実は厳しい。平日だというのに店内は20代前半のカップル二組に占拠され非常に賑やかである。大方授業をサボタージュした学生の類だろう。彼女がドーナツを頬張る姿(照れ気味)をデジカメで撮っている。
もう一組のカップルなんて更にすごい。向かいあって手をつなぎながら世界平和について語りあっているのだ。なにがノーマライゼーションだ。自分達の行動が既に、社会的弱者に対する立派なテロリズムだということに何故気付かない。愛と平和を語りながら、どのタイミングでホテルに誘おうか、頭の中はそればっかりだ。
僕の目から水滴がこぼれる。お皿の上のドーナツは今流行の塩スイーツへと変わってゆく。 ぼくは思った。神は死んだ。神は死にまくったのだ。

マリア様がみてる 1 (コバルト文庫)

マリア様がみてる 1 (コバルト文庫)