飲み会での出来事その2 多分こっちが本編。

彼女はとてもおとなしい子だ。
普段校内ですれ違ってもペコッとお辞儀をするだけでそそくさと去ってしまうし、
ゼミでの討論中も殆ど発言はしない。
決してやる気がないわけじゃないんだ。
書記を務める彼女は、ゼミの時間中、まるっこい小さな字で一生懸命他のゼミ生の意見を書きまとめている。
栗色のふわっとカールした髪を揺らしながら、
吹き出しそうになるくらい真剣な顔でノートをとっている事を僕は知っていた。

不器用な子なんだと思う。
彼女自身もそれをわきまえてるフシがあって、
いつも先ず自分のできることを精一杯やっているように見える。

僕はそういう彼女の潔さが好きだったし心地よかった。
だからこそ7月頭、ゼミで企画された飲み会の幹事に彼女がなったとき、本当にびっくりしたし心配したんだ。


前日。
結局飲み会参加予定者は20人近く集まっていた(同じ学科で他ゼミの生徒も混ざりカオス)。
やっぱりこれだけの人数になると店を確保するのも大変だったらしく、
新宿歌舞伎町のど真ん中という最高にデンジャラスな立地の居酒屋(しかも彼女含め誰もその店にいった事がないらしい。なんでやねん)に会場は決まっていた。

そして当日。
後から来る人間を駅まで迎えにいったり、泥酔した人間の介抱をしたりと、案の定彼女は息つく暇もなく大忙し。見兼ねて僕が途中からフォロー役を買って出たのだが、それがすべての間違いの始まりだった…と後になって思い知る。


僕が色々な人間の席から席へと忙しなく場所を変え、
お酌や注文、はたまたゲロ掃除をしている間、彼女は例の須賀さん(色魔)と才色兼子(サディスト)にガッチリ捕まってしまい、しこたま酒を飲まされていたのである。

僕が気づいた頃には時すでに遅し。
元々血色のいい肌は桜色を通り越し、ゆでダコの如く真っ赤っか。
呂律も回っていないし恐らくこの分じゃ、明日には記憶もなくなっている。

ぼーっと遠くをみつめる彼女にひたすら卑猥な質問をぶつけ続ける痴女二人。
頭が痛くなる光景だったが、そこはやはり酒の席。
僕にもその頃ちょうどいい具合にアルコールが浸透し始めていて、
ふと「どうせ明日には覚えていないなら、どさくさに紛れて俺もセクハラ質問してみようかな」なんていう邪念が頭を過ぎった。
うん。無論実行☆


「仲藤さん(仮名)、今日はおつかれさま」
「おひゅかれらま」←ほんとにこう聞こえる
「盛り上がってたみたいだけどなんの話してたの?」
「ゴム派かナマ派かって話!!アタシはナマ派」
「須賀さんには訊いてません」
「わらしもさいきんなまらよ」
「 ! 」
「そーなの!この子可愛い顔してやるよね!!彼氏に頼まれるとどうしても拒めないんだって!!」
「…まじ?」
「まじぃ。うふふ」

この「うふふ」がめっっちゃんこ可愛かった。
それこそ須賀さんのウザさがどうでもよくなるくらいに。

篠塚まさる、不覚にも超勃起。
だってだってあんな清純そうな顔して、はわわわわわ。


まさる、興奮し過ぎて更に質問してしまう

「な、ナマってことはさ、どこに…出されるの?」

トントンと指差しながら
「お・な・か(何故か笑顔)」

まさる、 射 精 寸 前 
やばい。やばすぎる。どうやばいか簡単に説明すると、やばいくらいやばい。
つまり興奮し過ぎて頭が悪くなるほどの衝撃だったわけだ。


しかし狂乱の宴もそう永くは続かなかった。
30分もしない内に彼女はぶっ潰れ、彼氏(一見好青年風)が迎えに登場。

去った後、須賀さん(ウザ痴女)が吐いたセリフが忘れられない。


「あの顔で生ハメ腹だしかよ。フヒヒ、たまんねぇなオイ」


あんた本当はオッサンだろ。