恋の香り

硬くて太いウンコをして二度寝した。
僕は久々に夢を見た。


寝入り端、夢うつつのあの瞬間に朧げでなんとも魅力的な匂いがしたのを憶えてる。
あの匂い。4月後半から5月半ばの真っ昼間、駅前で待ち合わせた女の子から感じる匂い。
僕は知っている。
これは恋の香りだ。
恋の香りが嗅ぎたくて、僕は夢のなかに深く深く潜り込もうとした。
夢はいつもどおり意地悪だから、追いかけるほど匂いは遠ざかっていった。


気がつけば僕は会議室にいて顔見知りのAV女優やマネージャーとくだらないジョークで笑い合い、オーナー案件のナンパロケについてレクチャーを受けていた。
新卒11年目の先輩から、かつやの割引きチケットを貰い、神妙な顔で「これでナンパをしてくるように」頼まれた。
竹槍でB29を墜とせと言わんばかりだ。
その場では力強く頷いた僕だが、勿論内心やる気など皆無だった。
適当に駅前をうろつき、頃合いを見計らって近場のかつやで海老フライ丼+とん汁大のセットを頼み、口の周りに揚げカスをまぶしながら会社へ帰ろうと思っていた。


そのとき、急に匂いがした。
あの朧げであたたかく、せつない恋の香りがした。
たまらなくなって走り出した先に、気が狂いそうになるほど芳しい女の子の後ろ姿を見つけた。
僕は昔そうしていたように、何千何万と繰り返した動作のように、とても自然に彼女の肩をポンと叩き、かつやのチケットを差し出した。


夢はそこで終わりだ。
中野区上高田の寝室で天井を見上げる。
小さな音を立て雨はまだ降り続いていた。
2014年3月20日木曜正午、どうやら春が来たらしいことを僕は悟った。

昔ついた嘘が化けて出る

久々に大学の友だちと電話した。
僕はちょくちょく思いつきで嘘をつくのだけど、それがわりとパンチの効いた嘘らしく、結構みんな覚えててくれてる。
でも自分では忘れちゃうんだ。


今日は『むかし2週間だけ相撲部屋にいた』っていう設定を蒸し返された。
四股名は巨根龍。おかみさんの飼ってるマルチーズの世話が嫌で部屋を逃げ出したらしい。
何を言ってるのかわからないと思う。
僕もよくわからない。


ときどきうんざりもするけど、自分の忘れっぽさが役に立つこともある。
忘れっぽいおかげで、過去に自分がついた嘘を誰か他人が話した小粋なジョークのように新鮮な気持ちで受け止めることができる。


新鮮な気持ちで僕は思った。
意味わかんねーわ当時の自分。

日曜の夜、アパートは僕から抜け出した。

日曜の夜、アパートは僕から抜け出した
階段を下りる匂い、換気扇からシャンプーの湯気
暗闇にぽつんと現れるコインランドリー
見てようが見てまいがまわる誰かの生活


半地下の酒場の階段でよろめいた男女は
思わず顔をつき合わせ、クスクス笑っていたね
駅前のガードレール、乗り捨てられた自転車
つけっぱなしのライトが眩しい


あの娘は誰を待つのかな
信号は赤、かき上げた髪、シャンプーの香り夜にとけた
あの娘はどこにいくのかな
路地裏の猫、吸い込まれる声、乾いたアスファルト、しみ込んだ涙


さっきみた後ろ姿は、昔好きだった人に少し似ていて
今日はたぶん普段使わない道を歩いて帰る

明けたのはめでたいけど会社にはいきたくない!

それとこれとは話が別なのだ。


皆さん、改めましてあけおめ。
篠塚まさるだよ。


僕はいま絶望感に打ちひしがれている。
明日から仕事が始まるという現実に向き合えず、サランラップを買うために入ったコンビニでBRUTUS(※都市で生活し、時にはアウトドア・ライフをも楽しむ大人の男の雑誌、だそうです)を買って出てくる始末だ。
断っておくが、BRUTUSなんて一度も読んだことは無い。
だが涙を流しながらページをめくっているんだ。今日はね。
そしてサランラップは華麗に買い忘れた。
狂っているよ。したたかに狂っている。
炊飯器の底で次第に硬くなる無洗米からも目をそらしている。
あぁ、じき夜が明けるね。
無洗米もカッチカチになる。
そうして僕の心も冷え固まり、記念すべき初労働が始まるのだ。


年末年始遊んでくれた皆さん、ありがとうございました。
後ろ髪ひかれますが、頑張ります。
今年もよろしく。

一方通行の愛

気を利かせたつもりが裏目に出てしまった。
親切がかえって迷惑だった。


こんな苦い経験を、僕ら人類は誕生以来ずっと繰り返している。
ウホウホ言ってた頃、今よりもだいぶ毛深かった時代から、多分繰り返し続けてる。


たとえば、こども原人が見つけた宝物の貝殻は、お掃除好きな母原人に見つかり、竪穴式住居の隅から野うさぎの骨やどんぐりの殻などと一緒に近場の貝塚へ捨てられてしまった。
たとえば、旦那が狩りに出かけたある日の午後、洗濯や石器洗いを終えた主婦原人が、近所の洞窟で間男原人と束の間のアバンチュール。
「ぁん!もっと、もっとめちゃくちゃにしてっ!!そう!ぁぁ、マンモスの交尾みたいにぃ!いい!いいぃぃッ!もっとぉぉ」
偶然通りかかった息子原人。母の獣じみた嬌声を悲鳴と勘違いする。
助けなければ!慌てて洞窟の奥へと走り、持っていた石斧で勢いよく間男原人のどたまをカチ割り――


きっとこんな具合で、一方通行の優しさや親切は数えきれない悲劇を生んだに違いない。
1万数千年が経った現代、茶色くふやけた塩辛い玉ねぎとぼろ切れのようにくたびれた牛肉を噛みしめながら僕はそんなことを考えていた。
そう、ここは牛丼屋である。


吉野家松屋すき屋なか卯
僕が知っているメジャー牛丼チェーンは、ライバル店に差をつけるべくどの店もある程度のオリジナリティーを打ち出し奮闘している。
しかし、どれほどの個性があっても“アレ”に関しては各店不思議なほどバランスが共通しており、そういった意味で僕はいつも一方通行の親切心に悶々としていたのであった。
アレ、とは何を隠そう「つゆ」のことである。
「はいっ牛丼並盛です(つゆは多めにしといたからね!)」
と、まるで心の声が聞こえてくるような清々しい“してやったり顔”で、どの牛丼チェーン店も肉の下の米が浸るほどのつゆをぶっかけてくる。
いつからつゆが多いこと=客が喜ぶサービスという認識が生まれたのだろうか。
かつて「つゆだく」という言葉が流行ったのは、「つゆ少なめ」がスタンダードであったからではないのか。


牛丼のつゆくらいでうるせー!と。
ガタガタぬかすんじゃねー!たんにお前の好みの話だろ!と。
皆さんの気持ちはよくわかります。
僕はね、こうやってモヤモヤしてるのが自分のせいだってだいぶ前に気付いたんです。
だから牛丼屋にいく時はいつもこう言ってる。
「つゆ、少なめで」と。


うわっ、この話すごく貧乏臭い!!

本当は武蔵美のチンコ祭りにいきたかった

学園祭にいってきました。
東京農大の収穫祭。
もうね、マブいチャンネーを片っぱしから収穫して
「ぼくの風呂吹き大根食べる?」
「え、それしめじでしょ…」
みたいなファッキン農大トークかますつもり満々で突撃したけど収穫ゼロ。
それに加えて農大プロデュースの地ビールは甚だしく不味かった。
でも面白かったよ。
学生ってふわふわしててむかつくけど、このくらいの距離感だといい。
くらげみたいだと思った。
一緒に泳ぎたくはないけど、水槽をたまに眺めるくらいなら悪くない。
土埃の舞うキャンパスで、お焼きをムシャムシャしながらそんなことを考えたよ。

餃子とチャーハン、あっ!瓶ビールも一本つけて。

ここ一年で読んだ本の数を数えようとして、大した数じゃないことに気付き途中でやめた。
最近小説読みたい欲求が増してる。
身体が物語を欲してる。


つーことで木村拓哉が主演の月9ドラマ(しかも初回)を見てしまった。
わかっていたことだが、これはなんつーか、その、ひどい。
空腹に耐え切れず、クッキーによく似た粘土でも口にしてしまった気分だ。
やべーな。
具体的内容は特に語らないけど、大体あなた方の想像したものであってると思う。
フジテレビと木村拓哉は10年、いや下手したら15年は前から同じことを繰り返してる。
と言う事はだ、内容に関して一切語っていないこの記事は、15年前だって読めるし15年後だって通用する可能性がある。
これは多分すごい事なのだろう。
しかし、なんだ。理解できない凄さほど恐ろしいものはないぜ。
ヤンキーが飼ってるアロワナとかさ。
退職者が置いていった自己啓発本とかさ。


そんなこんなで戦慄しながらもドラマ約1時間30分(おそらく初回拡大版)を見切ってしまった夜。
直後ファブリーズのCMを見て、平岩紙は歳とってエロくなったなぁー。鼻フックが似合いそうだなーとか悶々と考えて自分を取り戻したのであった。
おしまい。


【今日の一口メモ】
・ローションを使ったオナニーのあとで煙草を吸おうとすると、ライターが滑って上手く火がつかない。
少年、また一つ勉強になったなッ!HAHAHA!!